Short Stories



 Tsideツーショット / 城島+山口=?? / NATURAL / UNCONSCIOUS / 花言葉 / 誰目線?
       「おいで」の専有権 / XXX / 俺のもの。 / AMBITIOUS NARA!

 Asideふれて、わかる


  →T・Aside他、過去ログはこちらからご覧ください。


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 AMBITIOUS NARA!  T−all


「ねえリーダー、知ってる? 奈良にバスケのプロチームができるんだって」
 ある日の楽屋でそんな話題を出してきたのは、スポーツ番組のレギュラーを務めている太一だった。
「へえ、そうなん?」
 スポーツにはそこまで興味のない城島だが、奈良が関係してくると聞いて多少興味を持ったらしい。
「うん、2013年のシーズンから加入するんだって。試合が始まるのは秋頃からかな」
「バスケかぁ、うちのメンバーは皆あんまり関係ないな?」
 山口が他四人を見渡して言う。確かに、本格的にバスケに携わったメンバーはいない。
「太一くん、何でまた急にバスケの話題なの? まぁ、奈良のスポーツチームっていうのだけでも珍しいとは思うけどさー」
 松岡が訊ねると、太一は「いやぁ、ちょっとびっくりしたことがあってさ」と言う。
「なになに? リーダーがチームキャラクターになってるとか?」
「あー……じゃないけど。俺の勘違いはその考えに近かった」
 長瀬の99%冗談の台詞にそんな答えが返ってきたものだから、山口、松岡、長瀬の三人は「何それ!?」と眼の色を変える。
「勘違いってことは実際違うけど、しげ絡みってことだな?」
「チームキャラクターじゃなかったら、チーム名とか?」
「えーっ!? 奈良・茂ファイブとか!?」
 すかさず長瀬に、「何だそのダサいチーム名!」と松岡のツッコミが入る。
「正確にはリーダーっていうかうちのグループっていうか……。『バンビシャス奈良』っていうチーム名なんだよね」
「ばんびしゃす?」
「こう書くらしいよ」
 太一は手もとにあるリングノートの端に『Bambitious』と綴った。
「……もしかしてそれ、『Bambi』と『Be ambitious』をかけてる?」
 ぼそり、と城島が口を挟む。
「当たり〜。さすがリーダー、よくわかったね」
「バンビって、ディズニーアニメの?」
「奈良、言うたらやっぱり鹿のイメージやからな。そっからの連想やろ」
「太一くん、それのどこがリーダーとかTOKIOに繋がってくるんスか?」
 長瀬はわからないらしいが、松岡はわかったようだった。
「Be ambitious、でしょ。まぁ、チームコンセプトとしては珍しくないとは思うけど。奈良でBe ambitiousって言ったら、うちの曲イメージしちゃったんだね、太一くんは」
「確かに……偶然の一致か?」
 山口に訊かれて、太一は苦笑して肯いた。
「そうなんだろうけどね。俺、奈良出身って言ってるリーダーからイメージしてBe ambitiousとかけてきたのかと思って、ビックリしたわけ」
「どうせならイメージソングにしてもらったらどうなの? リーダー、得意の営業してきたら?」
「もとがCMソングやからなぁ……どうなんやろか。ちょっと調べとくわ」
「松岡、しげが本気になってるから」
「チームのイメージソングとかカッケー! リーダー、営業頑張ってきてください!」
 今日もTOKIO5人の楽屋は楽しげな笑い声で満ちあふれていた。


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 年末にこのニュース見たとき、わたしは本気で『奈良=茂さん=TOKIO=AMBITIOUS JAPAN!』の流れでチーム名が決まったかと思った。
 実際は公募らしいです。でもその方の頭の中に上の図式があったかもしれませんよね(笑)
 ちなみに、わが県のチームは応援ソング(?)でT.M.さんのHOT LIMITが流れます。

 2013.1.9




 俺のもの。  T−all


「おはよーございまーす。……あッ、山口くん! 酷いじゃないっスかぁー!!」
 楽屋に入ってくるなり、山口に非難の声を浴びせた長瀬に、皆が一様ぽかんと呆気に取られた。
「長瀬ー、何が酷いって?」
 山口が苦笑しながら問いかけると、長瀬は真剣な表情で「アワビっスよ、アワビ!!」と叫んだ。
「ちっ……バレたか」
「バレたか、じゃないっスよ!! しっかり放送に乗ってましたよ! ずるい〜アワビ〜」
「またいくらでも取ってやるって」
「ですけど! せっかくリーダーが残してくれるって言ってたのにぃ〜……」
 ぐずぐずと山口に食い下がる長瀬。
 少し離れて様子を見ている太一と松岡は、城島と話をしている。
「残しとくっても冷めちゃうでしょ?」
「しかも一口じゃん」
「そやけどなぁ、せっかく達也が取ってくれたもんやし、味わいを共有したいやん?」
 さて、山口と長瀬の不毛な言い合いは続いている。
「だってリーダー、3人分を考慮して囓ってくれてたじゃないっスか−! ね、そうっスよねリーダー!」
 振り返った長瀬に、城島は笑って肯いてやる。
「だからだっつーの」
「へっ?」
 山口は、こう言い放った。

「しげが囓っただろ? だから残りは、問答無用で俺のものなの! わかったか長瀬?」

 駄目押しのにっこりスマイルに黙り込んでしまった長瀬の背中を、城島がなだめるように撫でた。
「すまんなぁ、長瀬。あいつ、島でもそう言うて聞かへんかってん。また今度、達也に取ってもろたの皆で食べような?」
 長瀬は素直にこくんと肯いたのだった。

(『しげが囓ったから俺のもの』って……間接キスとかそういう意味?)
(それもあるんだろうけど……まぁ、“あの二人のことだから”、考えたら負けだ松岡)
(わかってるよ太一くん……)


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 達也さん、アワビ独占した理由を妄想。
 島でのリセッタ+長さんの親子は素敵すぎた!! もっとお願いします是非!!

 2012.10.21




 XXX  T−


「お前さー、せっかくナイスパス放ってやってんのに何やってんだよ。リーダーもノッてたんだから、ああいうのを正しく“据え膳食わぬは男の恥”って言うんだぜ?」
 ライヴ後ににやにやと笑いながらそんなことを言ってくる太一はもちろん、確信犯である。
 松岡はもの凄い勢いで左右を見渡して“ある人物”の影がないことを確かめると、太一に詰め寄った。
「あのねぇっ! 太一くんの後ろにいた人の視線がもの凄かったのッ! あれマジで背筋凍るからッ! そりゃあ流れ的にオイシかったしせっかくリーダーが俺の方寄ってきてくれて……ってそうじゃない!」
「与えられた試練には立ち向かわないとなー。それに打ち克ってこそだろ。真の愛情が試される場ってやつだよ」
「なななッ、何が真の愛情なのよッ!!?」
「もったいないことしたよねー、松岡くん。案外思い切って行ったら受けざるをえなくなるかもしれないよ、太一くんに迫られた俺みたいに」
「長瀬っ、お前には言われたくねーよ!」
「何か楽しそうな話してるねー、まっつおっかくん!」
 不気味なほどに楽しげな声とともにぽん、と背後から軽く背中を叩かれて、松岡は「ぎゃっ」と叫んで飛び上がった。
「あっはっは、何そのビビリ具合。何か疾しいことあんのか、松岡」
 朗らかに笑う山口の眼はしかし、明らかに敵を威嚇する凄味を効かせた視線である。
「ないッ、何にもないですッ!!」
「ふーん、ならいいけど? あの人にも言って聞かせないとなぁ、まったく」
 廊下に出て行きながら、「ちょっと−、シゲー?」と相棒を呼ぶ山口の声が遠ざかっていき、松岡ははーっと大きく安堵の息を漏らした。
 そして、じとっと太一と長瀬を見遣る。
「ねえ、あの威圧感に立ち向かえる覚悟、ある?」
「それはお前に与えられた試練だからしょうがないだろー? リーダー攻略のためには絶対に立ちはだかる障壁だからさあ」
「松岡くんファイト!」
「そんな無責任な励ましはいらねえッ!」


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 東京2日め、MC中に凸凹ちゅーの流れで真夜薔薇があったということで。
 報われない松さんが大好きですみません。松さん行っときゃよかったのにー、ホントもったいない!!(笑)

 2012.10.08



 「おいで」の専有権  T−


「お前さ〜、ホンットこっちの予想どおりに嬉々としてリーダーに振るよなァ。ま、わかっててやってんだけどさ、俺も」
 ぼそっと太一が呟いたのは、先程収録が終わったばかりの番組で女優さん相手に小芝居をする相手を松岡に選ばせたときのことである。
「わかってんだったらいちいち言わなくてもいいでしょうがっ」
 耳を赤くしながら、松岡は唇を尖らせる。
「……あ、そうだ。俺も太一くんに言いたいことあるのよ」
「何だよ?」
 あの企画では太一が誰よりも優位であるので、松岡に握られてしまう弱みなんてないはずなのだが。

「兄ィを指名させなかったのは、わざとだよね?」

「…………」
 無言で数秒間視線を合わせたあと、太一はフッと苦笑を漏らした。
「何かね……避けた方がいいかなって思ってさ」
 そもそも、「おいで」というのは山口の口癖のひとつじゃなかろうかと太一は思っている。長年飼っているじゅのんはじめ、動物に触れる機会も多いから……なのかはわからないが。
 だけど何より、太一らTOKIOのメンバーは、山口の「おいで」を幾度となく聞いている。
 ――特定の人物を呼ばう声として。
「山口くんが他の人に『おいで』っていう場面、なんか想像できなかったんだよね……」
「だよね! わかるよ太一くん、兄ィの『おいで』は悔しいけどリーダーに向けてのものだからね! 俺、絶対太一くんもそう考えて避けたんだろうなって思ってさあ」
 ものすごい勢いで同意してくる松岡の声を聞き流しながら、太一は、何だかんだ俺もあの二人の揺るぎなさが好きなんだなぁと思ったのだった。


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 5Lより。達也さんだけご指名がなかったのはこれが理由に違いないと信じています(笑)
 長さんの「おいで」はホントにキュンとしました!

 2012.05.27



 誰目線?  T−


「あ、松岡くん! こないだのロケぶりだねー」
「おー、長瀬。あのロケ楽しかったなあ! はじめ企画聞いたとき、なんだこのタイトルって思ったけどなぁ」
「デカデカと『あの頃の笑顔を取り戻せ!』ですもんね〜。誰目線? って思ったよ」
「てか、お前はあの頃も今も変わらず笑い転げてるじゃんかよ」
「変わんないと自分では思ってるんだけどねぇ」
「俺から見ても変わってねぇよ」
「松岡くんだって変わってないっスよ〜」
 和やかに先日のDASHロケの話をしながら、松岡と長瀬は他の三人がいるであろう部屋に向かっていた。
 いつもどおり、無遠慮にがちゃりとドアを開ける。
「「おはよー……」」
 二人の声は尻すぼみになった。
 部屋の中では、城島がパソコンを見せながら山口に話しかけている。それは特段珍しいことではないのだが、驚くべきは、オフモードの城島にあらざるようなハイテンションなのだ。
 しかも会話の内容が――
「見て見て達也、ゾウに乗った長瀬の笑顔! めっちゃ可愛いやろ! ほら松岡はな、ポニーと一緒の写真がえぇねん! カッコつけな子がここまでおどけてると可愛いよなぁ〜。長瀬は太一と道草旅してるから、馬の扱いがよぉわかってるんやね、すごいわぁ〜」
「はいはいそうだねー」
 相槌を打つ山口の口調はほとんど投げ遣りである。
 しかしまったく構う様子なく、城島はしゃべり続ける。
「ダチョウとのスリーショットはほんま、ベストショットやわ〜。二人ともえぇ顔しとる! 追いかけっこしてるときもすごく楽しそうやったしなぁ〜。こんな企画どやろ、ってスタッフさんに話してみて正解やったわ〜ホンマに!」
「いやいやシゲ、二人よりシロイルカの方が絶対可愛いだろ」
「達也、何言うてんの! 笑顔の松岡と長瀬の方がずっと可愛いやろ!」
「あの〜……リーダー、山口くん」
 際限なく続きそうな城島の言葉を遮ったのは長瀬だった。
「松岡くんが死にそうになってんだけど……」
 長瀬の足もとでは、城島が連発する「可愛い」にノックダウンされた松岡が、しゃがみこんで真っ赤になった顔を埋めていたのだった。


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 この企画タイトルが茂さん目線に思えたのでこんなSSになりました。
 子(下ふたり)煩悩炸裂な茂さんも、けっこう好きですv

 2012.05.07



 ふれて、わかる  A−all


「あれはびっくりしましたね、さすがに……」
「ホントに! 魔法みたいだったもんね!」
「絵を描いてるから、輪郭とか触ってわかるのかと思ったよ、俺」
 グループとしては後輩に当たるが、Jr.の頃に活動を共にしたメンバーも多い関ジャニ∞がゲストに来てくれた収録後。
 相葉、二宮、松本が話題にしているのは、箱の中身を当てるというゲームで、大野が見事、中に入っていた芸人を的中させたことである。
 大野の指先は、顔の輪郭を辿り、髪をさわり、パーツを確かめるように触れた。肩にも触れて、ちょっと考えたあとに、正解の芸人名を言ったのだ。
 ヒントもほとんどもらっていない状況での正解だったので、「何でわかったの!?」とメンバー全員が興奮して訊ねてみれば、大野は実に論理的な考えにて答えを導き出していたのだった。
 けれどあの瞬間は、本当に大野が魔法を使ったんじゃないかと思うくらいで――。
「で、さっきから翔ちゃんは何してるんだろうね?」
 相葉が視線をやった先には、何やらぶつぶつと呟きながら考え込んでいるふうの櫻井がいる。
 その奥には、テーブルに広げた雑誌をぼんやりと眺めている大野の姿。
「あんまり関わり合いになりたくない感じですけどねー……」
 面倒なことになりそう、と表情で語る二宮に、松本は苦笑した。
 何やら腹を決めたらしい櫻井が、立ち上がって大野の方へ歩み寄る。
「さ、智くん!」
「なに、翔くん?」
 雑誌から眼を上げた大野の目の前に座り、櫻井はこう言った。

「俺の顔、触って」

(うわ〜……ホラ面倒なことになってるでしょ……)
(翔ちゃんってときどきぶっとんだことするよね)
(相葉ちゃんに言われる翔くんって……まぁ、リーダーに関することだったらその通りだから、否定できないけど……)
 大野はというと、不思議そうな顔をしながらも躊躇わずに手を伸ばし、櫻井の頬にぺたりと掌をつけた。
「触ったよ?」
「そうじゃなくて……俺の顔、憶えてほしいんだ。触ってわかるように」
 大野はきょとんと瞬いたあと破顔して、くくくっと小さく笑った。
「やだなあ、翔くん……そんなことする必要ないのに」
「へ……?」
 間抜けた声を上げる櫻井。背後の三人も同じ気持ちだ。
(え、えっ? どーゆーこと?)
(ニノわかる?)
(いや……さすがにちょっと意味取れないんですけど……)
 大野は両手で櫻井の輪郭を包み込むと、にやり、と意味ありげなふうに唇を持ち上げた。

「翔くんの顔なら、当てられるもん。おれ」

「えっ……」
「だから、心配しなくていいよ?」
「や、えっ……マジで? ホントにわかんの智くん! 何でっ!?」
「内緒〜。言ったらおもしろくないじゃんか」
「えーっ、ちょっと、智くーん!」
(あれ、本当なのかな……?)
(さあ……。からかってるだけ、のような気もするんですけどねぇ……)
(何か、リーダーならできそうな気がしちゃうよね……)
 ちなみに、後ほど二宮が「さっき翔さんに言ってたの、本当なんですか?」と訊いてみたのだけれど、大野は「内緒だってば」と言ってくすくす笑っていたのだった。

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 このオンエアは録画できてなくて殴り書きのメモ(笑)しか残ってないので、細かいところ間違っていたらすみません……。
 ちょっとあれ当てたときはびっくりしました、本当に。
 本当に触っただけでわかるんだったら凄いよね、という妄想からこんな小話になりました。

 2011.10.10





 花言葉  T−


「あっ、おはよーございます山口くん! 聞きましたよぉ、リーダーからド派手な花届いたって!」
 山口が楽屋に入ってくるなりその話題を吹っかけた長瀬に、太一は一発殴ってやりたい気持ちを堪えた。
 綺麗に持ち上がる山口の唇が、いっそ恐ろしい。
「長瀬、太一、松岡。……お前ら、事前にしげから聞いてたとか、ないよなぁ?」
 びくうっ、と三人の背筋が凍った。
「ないないっ、ないです!」
「あるわけないって、一番わかってんの山口くんでしょ!」
「そうだよ兄ィ、あの人の性格からしてさぁっ」
「……だよな。……わかってんだけどさ」
 ふうと息を吐いた山口が、畳の上に腰を下ろす。
「兄ィ、その様子じゃ、本当に知らなかったっぽいね?」
 おそるおそる松岡が訊ねると、山口は肯いた。
「当たり前だろ。……くっそ、マネに厳重に口止めしとくんだった……」
 大きなため息をこぼしつつも、あの行為を山口が心から嫌がるはずはないとわかっている太一は、軽い調子で口を開く。
「すっごい目立ってたらしいね。スタッフさんも気ぃ使って、一番目立つとこに飾ってくれたんでしょ? しかも……」

『大量のかすみ草の中に一輪の赤い薔薇ッ!!』

 太一、松岡、長瀬の声が揃った。
 ついで、堪えきれずに笑い出す長瀬の大声。
「あーっはっはっは、めちゃくちゃリーダーって感じですよねぇ!!」
「もし俺が出演してあれ送られてたら、恥ずかしくて死ぬよマジで……」
「だろ、太一。……ああ、松岡なら喜ぶよな?」
「なッ、うッ……よ、喜ばない、こともない、けどッ!!?」
(絶対喜んでテンション上がって、リーダー語り始まるんだろうな……)
とは、3人共通の胸の内である。
「そ、それはともかくっ。俺、絶対あの人のことだから、花言葉とかも考えたんじゃないかと思ったんだよね」
「確かに」
「うーん、それってやっぱ、リーダーと松岡くんの思考ですよねー」
「で、かすみ草と赤い薔薇の花言葉、調べたのか?」
「いくつかあるんだけどね」
 そう言いながら、松岡は携帯電話をぱくりと開いた。
 ちらり、ともの言いたげな視線で太一と長瀬を見遣る。
「……覚悟して聞いたほうがいいよ」
 松岡の複雑そうな表情からいやな予感がビシビシ伝わってきても、もう逃げる術はなかった。
「まずかすみ草は……“清らかな心”、“無邪気”、“思いやり”、とか。ただ、俺が引っかかったのは、かすみ草の英名なんだけど」
「英名?」
「英語の名前。……“Baby's Breath”っていうんだよね……」
 まず一番に連想されるのは、城島が山口のために書いた曲のタイトル。
 そして……城島が好きだと言ってはばからない、山口の甘やかな歌声。
「うわーっ、俺、何か顔熱くなってきましたぁっ!」
「もう、赤い薔薇は何となく予想つくからやめとこうぜ松岡……」
「えっと……どうする、兄ィ?」
 ポーカーフェイスを装っている山口だが、その口元が緩んでいるのは3人とも気がついていた。
「……一応、聞いとく」
 やっぱり嬉しいんだ! と太一は心の中でだけ叫んだ。
「赤い薔薇は……やっぱり“情熱”、“愛情”、“美”とかが有名どころだと思うんだけど。……他にもさぁ、何かいろいろ衝撃的なフレーズがさぁ……」
 はーっと大きく息を吐いてから、松岡が口を開く。
「“あなたを尊敬します”とか」
「うーわぁ」
「“わたしを射止めて”とか」
「…………」
「……“わたしはあなたにふさわしい”……とか……」
 自分で言っていて心が折れてきたらしい松岡の声が沈んでいく。
「……ふぅん……そういうことね……」
 満足気に呟いた山口は、鞄の他に持ってきていた細長いビニール袋をたぐり寄せて立ち上がった。
「どうしたの、山口くん?」
 太一の問いかけには答えず、山口はビニール袋の中から何かを取り出す。
 ――それは、シンプルなラッピングに包まれた、一輪の赤い薔薇のドライフラワーだった。
「えっ……兄ィ、それって!」
 山口はにやりと不敵な笑みを浮かべ、携帯電話を耳にあてながらドアを開く。

「俺にふさわしいあの人を、射止めてくるわ」

 パタン、とドアの閉まる音が無駄に響いて、楽屋内はしばらく沈黙に包まれた。
「空気が甘ったるいんだけど……」
 太一の台詞に、松岡は無言で重たいため息を落とす。
 何より長瀬の「山口くんに、リーダーが乗り移ってた……」という呟きが、山口の心のうちを的確に表していたのだった。

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 明らかに異質(笑)な茂さんのお花と、達也さんの驚きっぷりから妄想を広げました。
 明雄さんからもお花来てましたね^^

 2011.09.10





 UNCONSCIOUS  T−


 久しぶりにDASHのロケに出ることになり、松岡はいたくご機嫌であった。
 朝の早い集合だって苦にならない。ロケの相棒が城島とあっては尚更である。
 おかげで、設定された集合時間より随分早く到着してしまった。
 城島も普段は集合時間に余裕を持って到着していることが多いのだが、今日はほぼジャストの時間に姿を現した。
「おはよ〜さん。ごめんな、ちょっと遅なってしもた」
「大丈夫、時間ぴったりだよ」
 城島が乗り込むと、間もなくロケ車は発進した。
「でも、リーダーが時間ぎりぎりって珍しいね。舞台の疲れ、残ってる?」
 松岡は城島の顔色を見てみるが、眼に見えて披露している様子ではない。
「ん、大丈夫やで。今日も、ちゃんと余裕持って起きたんやけどな……」
「二度寝でもしたの?」
 ちゃうよ、と城島は笑った。
「ZIP観てて……」
「あぁ、今日兄ィ出てるもんね。ちゃんとチェックしてんだ?」
「うん、まぁ、観れるときは観てる」
 それにしても、ZIPを観ていたことと到着時間が遅くなったことにどういう関係があるのだろうと松岡が疑問に思っていたら、城島はこう言った。
「テレビつけながら用意してたんやけど、達也の声が聴こえるとつい手を止めて、画面観てしまうんよ。他の人の声やったらBGMに聴けるんやけどね。何なんやろなぁ……一種の条件反射?」
「…………」
「で、画面観たら、よそゆきの綺麗なたっちゃんスマイルがあるわけやん? ついついぼーっと観てしもて、家出るのが遅くなってな……。松岡、どうしたん?」
 松岡がいつの間にかがっくりと肩を落として、やや顔を背けるようにして俯いてしまっているのに気づき、城島が不思議そうに問いかけた。さすがに、彼の耳が赤く染まっていることにまでは気づかなかったようである。
「な、何でもない……」
 そう答えながら、松岡は心の中で叫んだ。

(この人……ッ、絶対今の台詞がただの惚気だってことに気づいてねぇッ……!!)

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 unconscious=無意識の。
 『松さんの受難』パート2、のネタです……。
 太一さんと迷ってたんですが、結局松さんで書きました。
 真夜薔薇でロケがあったらいいな、という願望も込めて!

 2011.07.11





 NATURAL  T−all


 さて本日、ドラマの撮影が予定時刻よりも早めに終わった松岡は、上機嫌で帰宅した。
 新しいシングルが発売される関係で、いくつかVTR出演したテレビ番組の録画が溜まっている。夕食を食べながらそれを観るぞ! という心意気である。
 撮影現場でも料理のシーンがたくさんあるが、飽きることなく自宅のキッチンで簡単につまめる程度の夕食を作る。
 愛犬たちの餌も準備し、自分は夕食と共にテレビの前にどかっと陣取る。もちろん冷えたビールも忘れない。
 リモコンを操り、HDDの録画一覧を表示させた。
「えーと、シングルの番宣はこのへんか……。そうだ、兄ィのZIPではライヴレポートだったんだよなぁ。よし、これ観よう!」
 さすが、自他共に認める『TOKIO大好き』男。声までうきうきさせながらその番組を選び、エンターテインメントニュースが取り上げられる時間まで早送りした。
 呼び名のとおり、松岡が兄のように慕うメンバーが、看板男前アナウンサーの隣で、負けず劣らずの笑顔をふりまきつつ畏まって座っている。
 彼の容貌は文句なしに整っている。もちろんさわやか笑顔はバッチリ似合っているし、お手の物だ。
「兄ィってばすっげーさわやかじゃんよ〜。外面イイからね、こいつは! それを言ったらリーダーもなんだけど。二人して癒し系笑顔ふりまいちゃってさぁ〜。そりゃあ揃って教育テレビから声がかかるよね! ぜんっぜん違うのに変なトコ似てたりすんだよなぁリーダーと兄ィはっ!」
 松岡の中で、山口と言ったら城島、という連鎖が起きるのは最早、地球が約365日かけて太陽の周りを一周することと同じくらい自然なことであった。
 おー武道館ライヴだ、テンション上がるねぇ〜、と見ていたら、山口カメラによるリハーサルの撮影に切り替わる。
(あ〜俺、この時間まだ着いてねぇ……)
 と、ギターの音と共にカメラの方へ歩み寄ってくる、リーダーの姿が。
 ぽてりぽてりと歩き方がまるっきり素だ、と思っていたら。
『おはよぉ』
 どアップのリーダーにかけられた山口の声音もまた、城島限定の甘甘仕様だった。
 さらに言えば、『がんばってるね』という城島の表情、声も、自然体で山口に向けられたものだった。
(うわわわっ、それヤバイッ、それヤバイよ兄ィ〜〜っ!! リーダーもッ、それまるっきり俺ら向けのトーンじゃんかぁ〜! ていうか何、リーダーのあのカメラに向けた手の仕草っ無駄に可愛いんですけどッ!!)
 で、太一に向けてはいきなり朝番組仕様に切り替わっているのだから空恐ろしい。
(あんなのが朝のお茶の間に流れたのかっ……! あ、そういえば円陣の前とかも撮ってたな……あん時小芝居したんだっけか)
 わざわざ割本まで持ち出したんだから使ってくれよ〜という気持ちで続きを見る。
 楽屋からの廊下、歩いてくる長瀬と太一。
『ZIPで〜す。山口くん頑張って〜』
『見てて下さい!』
(うわっ長瀬末っ子炸裂だな! あの無邪気な笑顔は反則だろ〜、スタジオの兄ィ苦笑してるよ……。か…可愛いのは認める……っ。太一くんはライヴの切り替え入ってる感じだなぁ)
 こんもりとボリュームを持たせた長い髪をなびかせてやってくる城島。
(改めて画面で見ても脚細ェよなぁ……じゃなくって!)
 カメラの前まで歩いてくる城島を、笑顔で今や遅しと迎える体勢の山口。
『ZIPでーす』
 そのとき、画面の左端にちらっと何かが映る。
(ん?)
 しかしそれを気に留めぬうちに、城島が両手でZIPのキメポーズをする。
『ZIP!』
 城島と山口の声が綺麗にそろっている。しかも、ご丁寧にあとからZIPの合成つき。
『ありがとうございま〜す』
 満面の笑みで、山口の左手が城島の肩に回される。
 丁寧に一礼して前を通り過ぎようとする城島の右腕にも、山口の右手がしっかりと添えられていた。
 ――さりげなく、主張するかのように。
(さらにヤバイもんがあったよ……!! 何アレ何あの手何あのちょー満面笑顔ッ!! あの二人のやりとり聞こえてたんだよ〜、くっそーこんなことなら乱入しとくんだったっ……)
 その次のシーンはしっかり松岡の小芝居が使われて、一風変わった円陣風景、城島に高速ツッコミを華麗に決める松岡の姿も映っていたのだが、ゆっくり堪能してなどいられなかった。
(だいたいリーダーがZIPポーズやったくらいで、兄ィ笑顔がキラキラしすぎだよ! あ、そういえばさっきの違和感って何だ?)
 先ほど、ZIPポーズの前に画面に見えた何かを確かめるため、松岡は画面をまき戻す。
 山口の『ZIPでーす』という声とほぼ同時。
「あ!」
 山口の右手がが動いている。人差し指で城島を指し、何かの合図を送るように。
(この二人同じ楽屋だったし……打ち合わせてあったのか? それが決まったから兄ィが嬉しそうに……うーんでも、それで兄ィがこんなにはしゃぐかなぁ? ……もしかして、これ打ち合わせ無しのフリだったんじゃあ? リーダーにふって、できなかったら『何で出来ないんだよ〜』とかってオトすつもりで……でも意外にもリーダーがバッチリできちゃって、ひいてはリーダーがちゃんと憶えてるくらいZIPを観てるってことで……それでこんなに兄ィが嬉しそう、とか)
 脳内で組み立てられた仮説だったが、松岡にとってはそれがほぼ正しい真実のように思われた。
(何か……敵わないのはわかってんだけど……うん……はあ。)
 松岡を襲う疲労感。こんなの朝に見せられたら、それだけで一日の仕事を終えたのと同等に疲れてしまいそうだ。
(夜で良かった……)
 そう思いながら、ぐいっとビールを煽る松岡なのだった。

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 あれ、無駄に長い(苦笑) またの名を『松さんの受難』……。
 無条件にリセッタ大好きな松岡さんが大好きです!!
 『松さんの受難』(2)(3)もネタがあるんですが……UPできたらいいな〜……。

 2011.06.06





 城島+山口=??  T−all


「プラスしてみたい特技、なぁ」
 雑誌の撮影が終わった楽屋で、城島はインタビューの中にあったひとつの質問を唇に乗せた。
「何リーダー、あんたその答え考えてあったの?」
 城島の言動にはたいてい1番に反応する松岡が、もごもごと聞き取りにくいその呟きを見事に拾い上げる。
 携帯電話に眼を落としていた太一も顔を上げた。
「マジメな答え? それともノリ?」
「あ、聞きたい聞きたい!」
 衣装から私服へ着替え終え、長瀬も興味津々に寄って来た。
 対して山口は、唇に薄く笑みを浮かべ、ちらりと視線を向けただけである。
 3人に寄って来られた城島は、「答えとちゃうんやけどなぁ……」と苦笑を漏らす。
「達也の答え聞いてな、僕も、達也にプラスしたい特技はないなぁ、と思っただけなんやけど」
 城島の言う“達也の答え”とは、『この人には何もプラスしなくていい。このままがいい』という主旨の発言である。
 その台詞の意味を量りきれなかった3人を代表して、太一が口を開く。
 まさか、と思いながら。
「それはさぁ。……山口くんが、何か特技をプラスしなくっても何でも出来るから、とか……?」
「うん、そやなぁ。だってほんまに、達也に出来ひんことなんてほとんどないやろ」
 城島は至極真面目な表情で、さらりとそう言ってのけた。
(う〜わぁ〜……)
 太一は心底、今は振り返って山口の顔を見たくない、と思った。
「あ〜でも……最近あったなぁ。猪肉の脂身取るの。出来ひんかったなぁ、達也」
 くすくすと笑う茂に、やや拗ねた達也の声が飛ぶ。
「そんな特技要らねぇよ。しげが出来るんだからそれでいいじゃん」
「……あ」
 その台詞で、松岡が何かに気づいた。
「何だよ、松岡」
 あまりいい予感はしないながら、太一が訊ねてみる。
「質問の意図とはずれるんだけどね。……リーダーに兄ィをプラスしたら完璧だなと思って」
「…………はああ?」
 今度こそ、太一は眉間に皺を寄せて不可解だという声を上げた。
 松岡の城島、山口に対する敬愛っぷりはもちろん承知しているが、好きなもの同士を足したら完璧、だなんて、まるで小学生のような思考回路ではないか。
 すると松岡が、口を尖らせて反論にかかる。
「太一くん、俺の言ってることあながち間違ってないよ? 猪肉の脂身取るのもそうだけど、お茶の葉をこねる作業とかもさ、珍しく兄ィが苦手とすることって、たいがいリーダーが巧く出来んのよ」
「……確かに、そうだな」
「僕が出来ひんことは、ほとんど達也が出来るしなぁ」
 張本人からの同意が出てしまえば、太一の立場はない。
 と、不意に長瀬がにかっと笑みを浮かべて右手を高く上げた。
「ハイハイッ、もう1つ見つけました、リーダーと山口くん足したら完璧なところ!」
 そんなもん探さんでいいッ、というツッコミは、ぐったりした太一の口から出ることはなかった。
「二人のハモリ!!」
「――確かに! 長瀬〜お前いいこと言うねぇ!」
「でしょ〜?」
 お互いの肩を叩き合いながらはしゃぐ弟二人を尻目に、太一は、ああその点は肯けてしまうなと思ったのだった。

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 結論、リセッタは最強!
 松さんはリセッタに関しては盲目(だとわたしには見える)ので、ツッコミ役は太一さんになりました。

 2011.04.05





 ツーショット  T−


「あんな写真あったんだ」
 ふと会話が途切れた静寂のあと、山口がぽつりと呟いた。
 何の脈絡もない短い台詞だったが、城島はそれだけで、何のことを指しているのか理解することができた。
「ん、まぁなぁ……あれっきりかも、しれへんけど」
 TOKIOのメンバーとはまた異なる存在である、盟友。
 まだ尖っていて無駄なプライドも捨て切れなかった若き日の城島が、年下でありながら尊敬に値すると認めた人物。
 そんな彼とのプライベートなツーショット写真なんて、おそらくこれから先、撮ることなどないだろう。
「まぁそうだろうね」
 山口のそっけない返事に、城島はくすりと笑みをもらす。
「憶えてる? 達也が写真撮ってくれたん」
「何となくは、ね。平家派の時に、牛丼食いに行った話出てたし……」
 実際あの場で、その後中居に出遭って……というくだりまで話しはしなかったけれど、一連の出来事だから思い出として一緒に引っ張り出されてはいた。
 まさかそれを、城島が別の機会に話題にし、当時の写真まで持ち出すなんて思ってもいなかったが。
 城島の手がテーブルの上を滑り、山口の目の前に何かを押し出した。
 それは、掌大の長方形をした――1枚の写真。
「……それ、あげるわ。たぶん、達也、持ってへんかったと思うし」
 背景は、あの時中居が手にしていた――若かりし中居と城島が映った写真とほぼ同じ。
 けれどもそこに収まっているのは、澄ました表情の城島と、彼と肩を組んで両手でピースサインを作り、おどけた顔をした山口だった。
「……何、これ。……こんなの、撮ってた?」
 声に驚愕を滲ませながら、山口はおそるおそるといったふうにその写真を摘み上げる。
「撮ってたみたいやなぁ。写真の束繰ってたら、中居ちゃんとの写真の次に出てきたわ」
「……俺としげのツーショットってことは……」
「……中居ちゃんが撮ったんやろうなぁ」
 一張羅の革ジャンを羽織った城島とラフなジャージ姿の山口。
 牛丼を食べに行ったという記憶は消えなくても、とうに形はなくなっているはずだった若き姿――それが、残っていたのだ。
「嬉しいけど……嬉しくないな」
「まぁ、あんまり見返したいもんでもないかもしれんけど」
 城島は柔和に笑って肩をすくめる。
 城島自身、もう長い間これらの写真を眺めたことはなかった。でも、見ることはなくとも、写真という形として自分の手中にあるという事実――それで何となく満足なのだ。
「そうだね」
 山口はもう一度写真を見て小さく笑うと、それを裏返し、鞄の中から取り出した手帳に挟んだ。
 
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 リーダー鼎談のツーショット写真より。
 リセッタツーショットだってきっとあるっ! という妄想です(笑)

 2011.02.05