Everybody says he is a wise man.



 おれはニュース番組に出演している格好良い翔くんの姿をとても気に入っている。

 普段ほとんどテレビ番組は観ないけれど、時間が許すかぎり、月曜日の夜はニュース番組を観ている。
 おれは勉強が好きではないし難しいこともよくわからないけど、翔くんが解説しているのを聞いていると何だかわかった気になれた。
 本当に頭の良い人は、わけのわからない難しい言葉を使うのではなくて、簡単な言葉でわかりやすく説明することができる、とどこかで聞いたことがある。
 たぶん翔くんはそれができてるんじゃないかと思う。

 当たり前だけど、翔くんはおれと同じ嵐のメンバーだ。
 だから意外と、彼の顔を真正面から長い時間見ていることは少ない。
 しかもずっとよそゆきの顔で、なんて。
 番組の収録とかでは、モニターに映っている翔くんはじめメンバーの顔を見ていることも多いけれど、それとは全然気の持ちようが違う。
 キャスターさんの隣で難しいニュースにコメントをしている翔くんを観るおれは、ただの視聴者だ。翔くんと同じ立場にはいない。

 そんな翔くんを観て、誰もが賞賛の言葉を送る。
 だけどそんな膨大な言葉の中、どれくらいがホンモノなんだろう?
 翔くんのことを知ったかぶったふうにいろいろ言う人の中でどれくらいが、本当の翔くんを知っているというのだろう?

 真面目に澄ました顔した翔くんの顔に、まだ出逢って間もない頃の翔くんの顔が重なって思い出されてくる。
 あの頃はおれの方が背が高くて。
 でも、ちっちゃくってひょろひょろの翔くんは、大きな眼に強い光を宿らせていた。
 威嚇するように尖らせた視線で周囲を厳しく見据え。
 口を開けば、自分がこうと思った意見はきっちり主張するしたたかさもあって。
 おれより一つ年下なのにしっかりした子だなぁというのが第一印象だった。

 この話をしたとき、翔くんはちょっと不満げだったっけ。
 曰く、「俺はもっと前から智くんのこと知ってたのに」
 おれは覚えてないんだけど、ダンスのレッスン室で何度か一緒になって、翔くん含め同じ時期に入った子たちがおれの後ろで踊っていたらしく、「そのときから俺は智くんのこと凄いなって思って見てたんだ」と翔くんは言っていた。
 だからおれも言い返してやったんだ。
「おれも翔くんのこと見てたよ。いつもすごく頑張ってた。ちっちゃいのにエネルギッシュだなぁって。……背、は……抜かれちったけど」
 翔くんは「ちっちゃいは余計だよ」と柔らかく笑っていた。
 あの頃の刃のような強さはいつの間にか鳴りを潜めて、翔くんは今みたいに笑みを自然に浮かべるようになったし、全体的に柔軟になったと思う。
 ――そんな翔くんが、とても好きだ。

 おれは、翔くんの好きなところはと訊かれたらたぶん、「顔」と答えるだろう。
 翔くんの顔立ちはイケメンだと思うし、すごく好きなのは本当。
 だけど、今までの翔くんが全部詰まって生まれてくる豊かな表情を眺めているのが好きだから――だからおれは、そう答える。きっと。
 

2010.06.11



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