騒がしい会話七題  配布元:jachin


   

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〈1〉 T−

「ねえ太一くん、こないだ願掛けロケ行ったんでしょ? 結果どうだった?」
「うーん、まあまあってとこかな。俺は首をちょっと痛めてたんだけど、それはバツ。長瀬の花粉症と山口くんとドライアイは一応マルかな」
「太一くん、首痛めてたの?」
「あー、ゴチでちょっと。もうほとんど痛みもないんだけど」
「そうなんだ、ならいいけど。長瀬の花粉症は切実だもんなァ、ヴォーカルだしさあ。兄ィのドライアイってまたピンポイントだね」
「他はいたって健康ってことだろうね。あぁそういえば、山口くんに願掛けの内容訊くのに、村に電話したんだけどさあ」
「ってことは、明雄さんや礼斗のも?」
「うん、明雄さんがちょうど傍にいたみたいだったから訊いたんだけどね、『今のところ悪いところはない』って言われちゃったよ」
「さすがだなあ……リーダーの方がいろいろ願うとこありそうだよね」
「シゲコプターの成功は俺が願っといたけど(結果は言わないでおこう……たぶんこいつ気にするから)、リーダー担当はお前だろ。何願ったの?」
「うん、3箇所回ったんだけどね。『リーダーが長く仕事を続けられますように』っていう願掛けは上手くいったんだけど、良縁を願う願掛けは2つとも駄目だったんだよね……」
「ふーん……じゃあリーダーの結婚はまだ先ってことかな」
「もう、太一くんものんびり構えちゃって! それじゃ困るのよ! リーダーには早く“計画性のある嫁”に来てもらわないとッ!」
「……松岡、その“計画性のある嫁”っていう条件はどこから来たんだ? リーダーの好み?」
「好みも何も、あの人がしっかりしてそうでそうじゃないんだから嫁さんが計画性のある人じゃないと駄目でしょうが! リーダープライド高いとこあるから、そのあたりもきちんと対応してくれる人じゃないと……料理はリーダーより上手い方がいいし、綺麗好きで、それから……」
「条件厳しすぎるだろ……」
「そうなのよ、そんな女性めったに見つかんないでしょ? もうさぁ……」
「ん?」
「――俺が嫁に行く、って言いたいくらいだね!」
「……そうきたか」(ていうか、あんな厳しい条件に当てはまんのお前くらしかいねーよ、松岡)


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 “計画性のある嫁”という具体的な願い事……真剣すぎます、松さん!(10/11/14)     ▲top





〈2〉 T−

「ねぇマボ」
「なに、長瀬」
「俺、バカって言われた
 二人は顔を見合わせると、どちらからともなくにぃっと唇の端を持ち上げる。
いいよ、お前はバカでいい。――もちろん俺も。……あの人たちもな」
「そうだよねえ」
 長瀬は満足気に笑う。
「俺、もともとバカだけど、あの人たちとここまで一緒にやって来てバカが治るどころかパワーアップしてるもん」
「お前……それ聞いたらリーダー泣くよ?」
「リーダーが俺に教えてくれたのは一般常識だよ。つまんない大人になれとは教えられてないもんね」
「『つまらん大人にはなったあかんで』……って、あの人言ってたねそういえば」
「さーっすがマボ、無駄にリーダーの口真似上手いね!」
「そんなの褒められても嬉しくねーよ。まぁ……あの人たちと一緒にいて“つまらん大人”になる方が難しいよね」
「言えてる!」
「リーダーなんて常識人の皮被ってるけど、そういう点では一番タチ悪ィよ絶対。変に頑固だし自分の意思曲げねェし」
「山口くんもねー。人当たりいいし柔らかそうに見えるけど、それがすべてじゃないもんね」
「だいたい、リーダーと出逢って意気投合して、そんで今までずっと付き合い続けてることからしてもう、ねぇ」
「刺激的すぎだよねえ」
「太一くんなんてもう、悪戯させたらただの悪ガキだからね! もう俺ホント泣かされっぱなしなんだからっ」
「あっはははは!」
「そんな3人のもとで育ったら、誰だって“つまらん大人”になんてならねぇよ」
「そういうことだね」


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 きっと彼らはいつまでも悪戯っ子なんだろうなと思います。(10/12/19)     ▲top





〈3〉 T−all

「達也、達也」
 にっこり微笑む城島が、山口に向かってちょいちょいと手招きした。
 いつもなら「何、しげ」とでも答えながら笑顔で傍に寄る山口だったが、今日は何故か違っていた。
 ひくりと唇の端をわずかに引きつらせながら、腰を落ち着かせていた畳の上から立ち上がろうとさえする。
「何、どうしたの兄ィ」
 常ならぬ二人の様子に、松岡が少し眉間に皺を寄せながら問うた。
「いや、何でもない。何でもないけどな……」
「何でもないんやったら早よおいで〜、達也」
 その声に、山口のみならず松岡までもビクリとなる。
 優しい声音のくせに、何か薄ら寒いものを感じてしまったのである。
「あ、兄ィ、いったい何したの……」
「いくらしげの言うことでも、こればっかりは嫌なんだよッ」
 じり、じり、と後ずさりしていく山口。
 松岡が城島を振り返ってみれば、彼は薄手のインナーを手に山口の方へにじり寄っていく。
「厚着は嫌や〜言うて風邪引いてたら何もならんやろ! あと1枚でも2枚でも多く着ぃ!」
「厚着したら汗かくんだよ! そんなことくらいわかるだろっコンビ歴22年なんだから!」
「そやからよぉわかっとんねん、達也はいっつも冬に体調崩しやすいって」
「それ言うならあなただって! 真冬の雪原で無茶なロケしたばっかだろ、しげこそ風邪引かないように気をつけなきゃだよなっ?」
「下手な話題転換には乗らへんからな」
「ちっ……嫌だって、着ないからね俺は!!」
「も〜、往生際悪いやっちゃなぁ〜っ」
 決して広くはない楽屋内をドタバタ追いかけっこする二人。
 ――結局は、犬も喰わない何とやら、を見せつけられているだけ、ということで。
「あーあ、死んでるよ、あいつ」
「もくとーう」
 太一と長瀬は、松岡の背中に向かって両手を合わせたのだった。


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 達也さんが厚着が苦手らしい発言をされてたので、DASHロケも絡めつつ。
 松さん、とばっちりでごめんなさい(苦笑)(11/2/12)
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〈4〉 T−

 城島はふと空を見上げた。
 美しく晴れわった空に、翼を広げて悠々と鳥が舞っている。
「……生まれ変わったら、鳥になりたいなぁ」
 思わずぽろりと呟く。
 と、ポンと肩に乗る掌。振り向けば山口の完璧すぎる笑顔。
「そしてそれを俺が食う」
「…………何で?」
「食べたいから」
「……食える鳥とちゃうかもしれんやん……」
「それでも食う」
「達也、どんなけ食い意地張ってんの……」
「わかってないなぁ、あなただから食うんだよ?」
「はぁ……?」
「あなたが生まれ変わってるんだったら、俺だって人間じゃないかもしれない。犬かもしれないし猫かもしれないしライオンかもしれないし鯨かもしれないけど、何だって俺は鳥になったあなたを食う」
「いや……鯨は鳥を食べへんと思うで……」


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 独占欲、かもしれない。(10/9/25)     ▲top





〈5〉 T−

 1枚の紙切れを掴んだ松岡の手がわなわなと震えた。
 その紙切れに描かれていたのは、『冬のリーダー』と題された、長瀬の描いた城島のイラストである。
「案外よく描けてると思うだろ、松岡」
「自信作なんすよ! ねえどう、どう? マボ!」
「……まずこの格好についてはつっこまないでやるよ長瀬……」
「あ、それはね、楽屋で着替える前のリーダーって設定なの」
「問題はこの擬態語だよ……」
「ギタイゴ?」
「状態を表す言葉のことだよ。今の場合は『プルプル』ってのが、震えてる状態を表してるだろ?」
「へー、太一くんよく知ってますねぇ。で、これが問題ってどういうこと?」
「事実だろ? 俺も寒いの弱いからあんま人のこと言えないけど、あの人寒いと小刻みに震えてることあるよ?」
「――……可愛らしすぎるんだよ」
「……へ?」「はぁ?」
「可愛らしすぎんのっ! 不惑目前の男に何、『プルプル』って! 似合わねーんだよッて一蹴できないのが悔しいとこなのよ! 立って靴下が履けないってくだりで長瀬が『小鹿みたい』とか言ってたけど、それも否定できなかったし! あーもうッ、あの人の可愛らしさは意味が解らない!!
お前も大概、意味不明だぞ……松岡」
「だってプルプルって感じですもん〜。ね、山口くん!」
「……いや、それ以前に……しげの指が6本に見えるんだけどそれはスルーかよ?」


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 あの絵、平日の昼休みに見て噴きそうになりました……。(10/10/11)     ▲top





〈6〉 T−

「なぁ長瀬」
「なーにマボ」
「今日な、兄ィ、明日の仕事が早いから都内に泊まりなんだって」
「あ、そういやさっき話してたね」
「でも泊まるとこはホテルじゃないのよ、リーダーんとこ泊めてもらうって」
「へー、そうなんだあ」
「そりゃあさ……リーダーの家知りませんなんて半分ネタだけど、いや確かに結構長い間教えてもらえなかったけど、だけどさぁ、やっぱ兄ィは別扱いだよな、俺らがリーダーの家泊めてって言っても無理だよなぁ……」
「……」
「それか俺も東京より外に住んだらいいのか……そしたらリーダー泊めてくれるかな」
「………」
「ああッ、いっそのこと今日の帰りリーダーと兄ィの後つけて押しかけてみようか……!」
「…………うん、マボ、その成功率は、サバンナの乾期の降雨量より低いよ
夢くらいみさせろ……っていうか、お前の口からサバンナの乾期の降雨量なんて言葉が出るなんて、よっぽど無理ってことか……」
「それ何気に失礼だよマボ!」
 

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 松さんのテンションがおかしい=茂さんもしくはリセッタ関連で何かあった、というイメージで(10/9/25)
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〈2〉 T−

「ほらおじーちゃん、無理しないで休んでなって」
「1つ違いの達也におじいちゃん扱いされんのは複雑やわ……」
「ん? 聞こえないなぁ。日光にあてられて立ちくらみしたおじーちゃん?」
「……目覚ましならんでも5時に眼ぇ覚めるのもおじいちゃんやんかー……」
「健康的でいいでしょ、それは」
 陰になった縁側に腰かけたリーダーの頭にばさりと無造作にタオルをかけると、山口くんは鍬を片手に畑へ戻ってくる。
 見慣れたやりとり、と言ってしまえばそうなんだけれど。
「……仲睦まじいよねえ」
 そう言わずにはおれなかった。
 ちらりと視線を寄越した山口くんは、にやりと何処か確信的に笑みを浮かべた。
「代わってやろうか」
 一瞬、さまざまな思考が脳裏を駆け巡った。
「…………か……」
「ん?」
「……勘弁してください…………」
 リーダーにとっての山口くんという存在はやっぱり凄く特別なんだと、ずっと身近にいる俺ですら感じるのだから、一度その立場を経験してみたいと――昔なら絶対に思わなかっただろうが――今なら、少しは、そう思う。
 だけど、山口くんのある意味どんな脅迫よりも恐ろしい笑顔の前には肯けないって。
 ただでさえ、8月下旬に俺とリーダーの組み合わせで2本も番宣があったことを、口には出さないけど気にしてるって丸わかりなんだからさ……。


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 仲睦まじい=リセッタ。(10/10/11)     ▲top





〈5〉 T−


「死にたい」

 石造りの簡素な城の屋上で、風に吹かれて佇むシゲルの口から、ぽつりとこぼれた言葉。
 タツヤはハッと心を強張らせた。
「――って、ふと思うことないか? タツヤ……」
 頼りなげなくしゃりとした笑みでタツヤを振り返ったシゲルは、瞬間、ビタリと喉元に突きつけられた刃にゆるりと瞬く。
「手伝おうか?」
 剣を構えるタツヤの眼は、殺戮を好む色に塗り変わっている。
 この眼で――この剣で、彼はどれだけの命を啜ったのか。
「あなたが死にたいと望むなら、俺がそれを叶えてあげる」
 シゲルはふっと笑みをこぼし、タツヤの剣を握る腕を掴んで下ろさせた。
却下。――お前やって本気ちゃうやろ、タツヤ」
 タツヤも微笑み返して剣を鞘に収めたが、にこやかな笑顔のまま、シゲルの胸倉を掴み上げてぐっと顔を近づけた。
なら言うな。冗談でも、二度と、俺の目の前で死にたいなんて言うな」
 瞳の奥を揺らしながら、タツヤが噛み付くように言う。
「あなたの命は俺のものだ」
 シゲルはこの上なく幸福そうに、ゆったりと微笑んだ。


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 殺伐、執着……たまにはこんなリセッタも。(10/10/31)     ▲top